草加光明寺の掲示板に毎月掲出している言葉をご紹介いたします。取り上げる言葉とその解説は、『お寺の掲示板』(江田智昭著・新潮社)等を参考にさせていただいております。
「あなたは そのままで あなたなんだ」
ビートルズのメンバーとして活躍し、たくさんの名曲を残したジョン・レノンの一言です。
『お寺の掲示板入門』にて江田さんは「みなさんはいまの自分に納得することができていますか?」と私たちに語りかけます。近年SNSの利用者が増加していることを例に、SNSの便利さを認めるいっぽうで、他者の充実した姿を見ることで自分自身を不幸だとみなす人が増えているという調査結果があると示します。 以前このブログでサザエさんの「人と比較するところから不幸は始まるのよ」という言葉をご紹介しましたが、調査結果はサザエさんの言葉を証明するかのようです。
お釈迦様は「他人のしたこととしなかったことを見るな」とおっしゃっていますが、他者の情報が氾濫した現代社会の中で、それが非常に困難になっているのは間違いないでしょう。
と、現代社会の状況を概観しながら、江田さんは阿弥陀さまのお救いに目を向けていきます。
阿弥陀様はたとえ私がどんな状況にあっても、「あなたはそのままであなたなんだ」と認めてくれます。「南無阿弥陀仏」のお念仏をとおして、「そのままのあなたを救う」のが阿弥陀さまのお救いなのです。
宗教学者・釈徹宗さんと随筆家・若松英輔さんとの対談の中で、釈さんは芸術家・内藤礼さん作の「なにもならなくていいよ、おいで」という作品に言及しつつ、以下のようにおっしゃっているそうです。 『無条件に「おいで」と言ってもらえる世界がなければ、我々の生はあまりに過酷です。無条件に「おいで」と呼ばれる扉が開けば、この過酷な生を全うできる気がします。』 江田さんは承認欲求をかきたてる現在の社会システムの中で生きてゆくことの困難さに思いを馳せつつ、私たちにあたたかい言葉をかけてくれます。
あくまで他者は他者、自分は自分。「南無阿弥陀仏」のお念仏は、己への恥じらいと同時にいまの自分に納得してゆく力を与えてくれます。
ともすれば当たり前のような一言も、お念仏の教えを通して聞くとあたたかいものを感じます。
「おいで」と言ってもらえる世界は、聞法を重ねることによって開けてくるのです。
南無阿弥陀仏のお念仏は「そのまま来いよ」という阿弥陀様からの喚び声と伺っております。「おいで」と言ってもらえる世界のありがたさを、みなさまとともに味あわせていただければと存じます。
引用部、『江田智昭が語る お寺の掲示板入門』(江田智昭/本願寺出版社 P42~43)より
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