お寺の掲示板(令和7年6月)
- 木原祐健
- Jun 1
- 3 min read
草加光明寺の掲示板に毎月掲出している言葉をご紹介いたします。取り上げる言葉とその解説は、『お寺の掲示板』(江田智昭著・新潮社)等を参考にさせていただいております。

「一歩進んで二歩下がる 歩んだ数はプラス3」
この言葉は、浄土真宗本願寺派 上毛組が作成したポスターの言葉です。
(公財)仏教伝道協会が開催した「輝け!お寺の掲示板大賞2024」では宗派を越えた僧侶と市民が協働してまちを元気にするプロジェクト「寺子屋ブッダ」から、「寺子屋ブッダ賞」を受賞しました。
「寺子屋ブッダ」による講評は以下の通りです。
「無駄なことなど何もない!」と勇気をもらいつつ、「物差し」に縛られている自分にも気付かされました。次世代に語り継ぎたい名作です。
『お寺の掲示板』の江田さんは、この言葉をお釈迦様のご修行の過程から説明していきます。
お釈迦様は二十九歳で出家し、想像を絶するほど厳しい修行(苦行)を行いますが、あるときにこれまでの苦行を未練なく全て放棄したそうです。その様子を見た他の修行者はお釈迦様を堕落したと思い、お釈迦様の元を去って行きます。お釈迦様は苦行で衰えた体をゆっくりと回復させ、菩提樹の下で冥想に励まれます。そして三十五歳のときに菩提樹の下で悟りをひらかれます。
江田さんは、この過程に対して
このプロセスを見ると、最初から苦行せずに瞑想に励んでいればもっと早くさとりを開けたと考える人がいるかもしれませんが、私はそうは思いません。苦行を実践し、自身の体感としてそれが無駄であると分かることが、おそらくお釈迦さまにとって必要なことだったのでしょう。
上記のように思いを寄せ、そのうえで、「一見無駄に見えることが、実はそうではないということがあります」と、私たちの側に引きつけます。
みなさんも自分自身の人生を振りかえってみてください。自分では無駄や失敗だと思っていた過去のマイナスな出来事が、年を取るにつれて、実は重要な出来事だったと気づかされることがあるのではないでしょうか。
江田さんは人間は経験によって物事のとらえ方が大きく変化することを指し示し、
ですから、個人的にマイナスと感じる出来事があった後、自分自身がどのように動き、その動きの中からどのような気づきを得られるかが重要になってくるのです。
と、掲示板の言葉とつながる気づきを私たちに投げかけ、以下のような言葉でコラムを閉じていきます。
どんな人にも辛い出来事が必ず起きます。苦しみの多い人生ですが、過去の出来事がプラスに変わるように、歩みや学びを止めないことが大切なのではないでしょうか。
私たちが生きる「娑婆」は「堪忍土」と言い、耐え忍ぶ場だと、ご法話で聞いたことがあります。人生が苦難の中にあっても、足を止めずに歩み、少しでも学んでいくことが、過去の出来事をプラスにすることができる道につながっていくと考えていきたいものです。
引用部、『「お寺の掲示板」の深〜いお言葉』(江田智昭/ダイヤモンドオンライン 2025年3月31日更新)より
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